〜神話・歴史・大自然の息吹をめぐる物語〜
第1部 神話編:暗闇から始まる命の記憶
第8回:目覚める魂〜森の主が教える闘争〜
ALOHA! Ka Hōkūlani HULA STUDIOのMotoeです。
フラの詠唱には、旅の無事を祈る言葉や、行く手を阻む深い闇を越えていく姿が静かに歌い継がれています。
そこには、ハワイの神話に生きる神々が、自らの足で道を歩み、困難と向き合いながら魂を磨いてきた記憶が息づいています。
今回は、火の女神Pele(ペレ)の末の妹、Hiʻiaka(ヒイアカ)が歩んだ過酷な旅の物語です。
可憐な少女が、真の「大地の癒やし手」へと目覚めていく歩みを辿っていきましょう。
【ペレの願いと、遠きカウアイ島への旅立ち】
ある日、ペレの意識は微睡みの中で、海を越えた遥かカウアイ島に住む首長Lohiʻau(ロヒアウ)の気配に惹かれ、ケエの海辺へと導かれていきました。
そこに、力強く太鼓を打ち鳴らしながらフラを踊っているロヒアウの姿がありました。その響きと姿は、夢の情景として消えることなく、ペレの胸の奥へ深く残っていきます。
ペレは、彼を自分のもとへ連れてきてほしいと姉妹たちに願います。しかし、その旅路には危険が待ち受けていると知る姉妹たちは、誰ひとり名乗り出ることができません。
その場には、重い沈黙だけが残されていきました。
その中で、ひとり静かに立ち上がる気配がありました。
一番下の妹ヒイアカです。
彼女は旅立ちにあたり、留守のあいだ、愛するプナの森と親友ホーポエを守ってほしいと、ペレに託します。
ペレはそれを受け入れながら、ふたつの厳しいKapu(カプ:掟)を課します。ひとつは期限を守ること、もうひとつはロヒアウに触れないことでした。
【暗闇の森のなか、モオ(大トカゲ)との激闘】
海を渡り、島々を巡るヒイアカの旅。その行く手には、荒ぶる神々との命がけの戦いが待ち受けていました。
なかでも語り継がれているのが、ハワイ島のHilo(ヒロ:地名)に広がる深い森を支配していたPanaʻewa(パナエワ:森の主)との対峙です。パナエワは、ハワイ神話においてMoʻo(モオ:大トカゲの姿をした守護神)と呼ばれる存在でした。
モオは単なる怪物ではありません。人間の思い通りにはならず、ときに命を奪うことさえある。その姿には、大自然が持つ畏れと神秘が映されていたのです。
深い霧をまとい、毒を吐きながら行く手を阻むパナエワ。ヒイアカは、ペレから授かったPāʻū(パーウ:スカート)に宿る神聖な力を解き放ちます。
森の精霊たちの助けを借りながら、果てしない戦いは続きました。そしてついに荒ぶるモオは静まり、鬱蒼とした森には再び光が差し込んでいきます。森は静かに本来の姿を取り戻していったのです。
この過酷な道のりの中で、ヒイアカにも変化が訪れていました。
可憐な少女だった彼女の内に、傷ついた土地を癒やし、闇を光へと還す「大地の癒やし手」としての力が芽生えていったのです。
【困難を越えるたびに、祈りは深まる】
愛するプナの森とホーポエを心の支えにして、自らの足で旅を続けたヒイアカ。幾度も困難と向き合いながら、ついにカウアイ島へと辿り着きました。
その果てしない歩みの中で、ヒイアカは自分の内に眠っていた揺るぎない強さと、深い慈しみの心に出会っていきます。それは、困難を越えるたびに少しずつ育まれていったものでした。

次回は、ようやくロヒアウを連れ帰ったヒイアカを待っていた残酷な現実へ。
嫉妬に燃えるペレとの、ハレマウマウ火口での壮絶な闘争と許しの物語をお届けします。
Me ke aloha pumehana,
Motoe
