〜神話・歴史・大自然の息吹をめぐる物語〜
第1部 神話編:暗闇から始まる命の記憶
第5回:静寂の雪〜マウナケアの女神ポリアフと炎の対峙〜
ALOHA! Ka Hōkūlani HULA STUDIOのMotoeです。
ハワイの神話には、火のように激しい物語だけではなく、雪のような静けさを湛えた物語も語り継がれています。
今回は、燃え盛る火の女神Pele(ペレ)と対峙した、気高く美しい雪の女神Poliʻahu(ポリアフ)の物語です。
火と雪。
対照的なふたつの力が織りなす景色へと、静かに歩みを進めていきましょう。
【白き山に住まう、静寂の女神】
ハワイ島にそびえる最も高い山、Mauna Kea(マウナ・ケア)。
その冷たく澄んだ頂には、真っ白な雪の外套をまとった女神ポリアフが静かに住まうと伝えられています。
地の底から熱いマグマを噴き上げるペレに対し、ポリアフは冷たさと静寂をまとった存在でした。
彼女が山頂から静かに息を吹きかけるとき、大気は冷たく澄みわたり、山肌は雪の白へとゆっくり染まっていきます。
【熱い炎と冷たい雪のせめぎ合い】
ある日のこと。
山の斜面では、人々がHōlua(ホールア:山肌を滑り降りる伝統的な遊び)に興じていました。
その中に、美しい女性の姿をしたポリアフも静かに加わります。
そこへ現れたのが、見知らぬ女性へ姿を変えたペレでした。
ペレはポリアフに、滑りの競い合いを持ちかけます。
けれどポリアフは、雪をいただく山のように静かでした。
勝負を重ねても、その表情が揺らぐことはありません。
その静けさは、ペレの内なる炎をさらに燃え上がらせました。
やがてペレは、本来の火の女神の姿を現します。
大地が裂け、真っ赤なマグマが噴き上がりました。
熱はあたり一面を覆い尽くしていきます。
それでもポリアフは動じることなく、その炎に向き合い続けます。
ほどなく、白い雪の外套がその身を静かに包み込みました。
空の高みからは、絶え間なく雪が降りそそぎ、世界を白い静けさで満たしていきます。
降り積もる雪は、燃え盛る炎の上へ静かに降り続きました。
赤々と揺れていた炎も、やがてその姿を変えていきます。
熱に揺らいでいた大地は静けさを取り戻し、最後に残ったのは、ただ白く降り積もる雪の気配だけでした。
【内なる炎と、それを包む静寂】
火は大地の奥で燃え続けます。
雪は空から静かに降り続けます。
どちらかが消えるのではなく、そのどちらもが自然の営みの中にあります。
Kahiko(カヒコ:古典フラ)を踊るとき、ダンサーの身体の中にも、この「炎と雪」が同時に存在しています。
大地を力強く踏み鳴らし、内なる熱を呼び覚ますステップ。
そこには、ペレの激しい鼓動が息づいています。
けれど、どれほど下半身が力強く躍動していても、上半身や心は静けさを失うことなく在り続けます。
それはまるで、ポリアフの雪のような静かな強さです。
激しい熱を、静寂が包み込む。
そのふたつの重なり合いが、フラをただの動きではない、美しく神聖な祈りへと深めていくのです。
日々のレッスンでステップを踏むとき。
足元に燃えるペレの炎と、胸の奥底に静かに降り積もるポリアフの雪を思い描いてみましょう。

次回は、ハレマウマウの火口で休息するペレと、妹ヒイアカが初めて踊ったとされる「はじまりのフラ」の景色をお届けします。
Me ke aloha pumehana,
Motoe
