アロハの奥にあるもの役割に疲れた「私」を癒す――ハワイの叡智と動く瞑想
「フラを踊り終わったあと、悲しくもないのに涙が出そうになるんです」 「身体は疲れているはずなのに、頭の中がシーンと静まり返って、深い安らぎを感じます」 レッスンのあと、スタジオでは生徒さんたちからこんな言葉をよく聞きます 。この不思議な感覚は、単なる運動後の爽快感とは少し違います。
私たちは毎日の忙しさの中で、いつのまにか「心(思考)」と「身体(感覚)」が別々の方向へ歩いてしまっています 。頭の中は「あの時、あんなことを言わなければよかった」という過去への後悔や、「明日の仕事はどうしよう」という未来の不安でいつもいっぱいです 。 本書の第十二章では、フラがどのようにしてその思考のざわめきを止め、心と身体を「いま、ここ」で結び直してくれるのかを、心理学や脳科学の視点から紐解きます 。
フラのゆっくりとした腰の揺れ(アミ)や、大地を踏みしめる力強いステップは、骨盤の奥深くにある「腸腰筋(魂の筋肉)」の緊張へそっと風を通します 。強いストレスを感じたとき、私たちは無意識にお腹をぎゅっと固くして、心という一番やわらかな場所を鎧のように守っています 。 フラの動きによってその奥深いこわばりがゆるむと、せき止めていた感情があたたかな涙となって、自然と外へ流れ出していくのです 。それは決して悲しみではなく、あなたの内側が「もう鎧を着て守らなくてもいいよ」と安心した、静かな合図にほかなりません 。
さらに、指先まで神経を行き渡らせ、ステップを踏み、詠唱を奏でるという複雑な動きを同時に行うことで、脳の「過去や未来をぐるぐると考え続ける回路(DMN)」が強制的にストップし、深い瞑想状態(マインドフルネス)へと入っていきます 。 言葉にならないもやもやを抱えているなら、無理に理由を探さず、ただ大地を踏みしめてみてください。フラは、あなたを一番安心できる「ご自身の中心」へと連れ戻してくれます 。

