光と影を紡いだ旅路―フラに導かれた25年の記録

序章:星の記憶に導かれて
穏やかな表情で未来を見つめる、Ka Hōkūlani HULA STUDIO主宰motoe
フラと共に歩んだ25年。その光と影、すべての瞬間が、今の私に繋がっています。

記憶の奥で瞬く、小さな灯が教えてくれた。

フラとの人生は、決して平坦なものではありませんでした。
踊れなかったカヒコの時間、静寂の中で光を探した日々――それらすべてが、今の私自身とこのスタジオの礎です。
遠回りだったかもしれません。それでも歩み続けた先で、星の光は再び私の内に灯りました。

これは、そんな私の記憶をたどる物語。
フラへの想いが絶えることなく、心の奥で静かに燃え続けた日々を少しだけお話しさせてください。

第I章:魂の目覚め ― 厳しさの中で見つけた、ひとすじの光

痛みの先にあったのは、揺るぎない喜びだった。

私がフラと出会ったのは、今からもう25年以上も前のこと。
かつて、伝説的なクムフラと称された 故ダリル・ルペヌイ氏のもとで、初めての女性〈ワヒネ〉の弟子のひとりとして活躍されたクムを師事する、日本人講師のもとで学び始めました。

その講師を通じて、そのハワイのクム(師)から学ぶ機会にも恵まれ、厳しさの中にも深い充実を感じる日々でした。特に心を強く惹きつけたのは、神聖で力強い古典フラ「カヒコ」。イプヘケの鼓動が自分の鼓動と重なり、詠唱(オリ)の響きが魂に深く染みわたる。そんな感覚に、気づけば夢中になっていました。

優雅なアウアナにも触れ、ウクレレを奏でる楽しさも知りました。フラのすべてが新鮮で、いつしか私の世界はハワイの色で満たされていったのです。
この頃は、ただ踊れることが何より楽しくて、この道がずっと続いていくのだと、自然に信じていました。

motoeのフラ人生の始まりを記録した写真コラージュ。ハワイでの修練風景や、若き日のステージ写真など。
始まりのころ ― ハワイでのフラの旅路。ただ夢中で、ひたむきだった日々の記憶。
第II章:運命の岐路 ― 手放した場所、残された想い

失ったからこそ、見えたものがある

あの夢中だった日々が、いつしか10年という時間に。フラはすっかり私の人生の一部となっていました。そんな頃、思いがけず大きな転機が訪れます。転居という避けられない事情によって、長年通い、カヒコを学んできた大切な教室を離れなければならなくなったのです。

それは私自身の意志ではどうすることもできない、本当に辛く、胸が締めつけられるような別れでした。
新しい土地では、新たな教室の扉を叩きました。そこは温かく迎えてくれる素敵な場所でしたが、カヒコの指導は行われていませんでした。それでも「フラが好き」という気持ちに変わりはなく、私は5年間、アウアナだけを踊り続けました。

けれど、優雅なアウアナに身を委ねるたびに、心の奥底から湧きあがる思いを感じるようになったのです――「本当に踊りたいのは、あの力強いカヒコなのだ」と。その魂の渇きは、日を追うごとに大きくなっていきました。

様々なステージでアウアナを踊るmotoeの写真コラージュ。華やかな衣装と、心の葛藤を表現。
軽やかに踊るアウアナ。けれど、華やかな光の中で、心はカヒコの持つ深みを求めていました。
第III章:沈黙の季節 ― パウスカートと共に閉じた心

静けさの中でも、フラは心の奥で踊っていた。

その渇きは、もはや心の奥で隠せるものではありませんでした。私は、5年間通い続けた教室を離れるという、人生で二度目の大きな決断を下します。そしてその後、しばらくの間、私はフラの世界から完全に距離を置くことになりました。

スタジオに通うことも、パウを身にまとうこともない、穏やかで静かな日々。フラの音楽が流れるだけで、胸が少し痛むような…そんな時期でした。まるで、フラという存在が私の人生からすっかり消えてしまったかのように感じていたのです。

遠ざかっていた日々の中でも、耳に残っていたイプヘケの鼓動、胸の奥に響いていたオリの声が、私の心をそっと揺らしていました。――それらは静寂の中でひそやかに灯り続ける、小さくても消えない、たしかな炎のようでした。

フラから離れていた「沈黙の季節」を象徴する写真コラージュ。でも何かに惹かれたく新たな楽しみを探した日々。
フラのない毎日。それでも、心はいつもハワイの風の中に。
第IV章:あの日の光 ― 星がふたたび瞬く場所へ

心がもう一度、フラのリズムに揺れた日

光は、思いがけない方角から静かに差し込んできました。フラから離れていたある日、クムフラ ケアリー・サバロス氏による指導者クラスの存在を知ったのです。それは、私を再び光の中へと導いてくれる運命のきっかけとなりました。

久しぶりに踏みしめたスタジオの床の感触。仲間たちと汗を流す喜び。そして、クム カヒキナ・ナイリイリ氏の教えにも触れることができました。お二人の指導は、忘れかけていた客観的な視点と、フラという伝統への深い敬意をそっと呼び戻してくれたのです。

さらに、日本の指導者コミュニティという新たな「フラオハナ」との出会いにも恵まれました。その温かな存在は、長く孤独だった私の心を優しく照らし、静かに眠っていたフラへの情熱を、力強く、そして確かに目覚めさせてくれました。
この瞬間、私は心から確信しました――私の道は、まだ終わっていない。むしろ、ここからが新たな始まりなのだと。

再びフラの世界へと歩み始めたmotoeの写真コラージュ。新たな師や仲間とのワークショップ風景など。
新しい師や仲間との出会いが、再び光の中へと導いてくれました。
第V章:あなたの星が輝くために ― Ka Hōkūlani誕生の物語

今度は私が、誰かの道しるべになれたら。

これまで歩んできたすべての道のり――その一歩一歩が、Ka Hōkūlani HULA STUDIOの礎となっています。
カヒコを踊りたくても踊れなかった、あの深い魂の渇きを知っているからこそ、誰もが安心して、心ゆくまでカヒコに向き合える場所をつくりたい。そんな強い願いが、このスタジオに込められています。

一度はフラの世界から離れたからこそ、それでもなお惹かれ続けるフラの力――私は、その本質を誰よりも深くお伝えできると信じています。
かつてハワイのクムが授けてくださった「Hōkūlani」という名前。「あなたは天(Lani)に輝く一番星(Hōkū)のようね」と言ってくださったその言葉を、今も胸に刻んでいます。一度は光を失いかけたこの星が、再びここに在るのは、どんな時もフラへの愛を信じ続けたからです。

そして今度は、私が、あなたの内なる星を輝かせる番です。
このスタジオで、あなた自身のフラの物語が始まることを、心から楽しみにしています。

現在のKa Hōkūlani HULA STUDIOでの温かいレッスン風景をまとめた写真コラージュ。生徒と共に笑顔のmotoe。
そして今、この場所で、新しい「フラオハナ」の物語が、日々、紡がれています。
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