ALOHA!Ka Hōkūlani HULA STUDIOのMotoeです。
ハワイと聞いて、皆さんが思い浮かべるのは、色鮮やかな花のレイではないでしょうか。 歓迎や祝福、愛や感謝を伝える「アロハ」の精神が形となった、美しい文化の象徴ですよね。
けれど、フラを踊る私たちが身にまとうレイは、単なるアクセサリーや飾りではありません。
特に、私たちが専門とする古典フラ(カヒコ)を見て、「どうしてカヒコのダンサーは、華やかな花ではなく、緑の植物ばかり身につけるの?」と不思議に思ったことはありませんか?
実は、カヒコで用いられるレイは、身体と心、そして踊りを、ハワイの神々や大いなる自然と繋ぐための——神聖な「道具」であり、神々との架け橋なのです。

今回は、カヒコに欠かせない「シダのレイ」に込められた、深い物語をお届けします。
1. 森の神々をその身にまとう(キノラウ)
フラダンサーがレイを身につけるのは、決してお洒落のためではありません。 それは、森の神々の神聖な力(マナ)をその身に宿すための、大切な儀式です。
ハワイの文化では、特定の植物は神々の「キノラウ」——すなわち物理的な化身であると考えられています。
ダンサーは、レイとしてこれらの植物を身にまとうことで、神々のエネルギーを直接肌で感じ、一体となって踊ります。 私たちの踊りは、個人の感情表現である以上に、神々の物語を語るための器。 レイは、その器である私たちの心身を清め、神聖なマナで満たしてくれるのです。
2. フラの女神ラカの化身「パラパライ」
古典フラ(カヒコ)を踊る上で、最も神聖で重要な植物の一つが「パラパライ」というシダです。
レースのように繊細で、森の清涼な香りを放つこの美しいシダは、フラの女神「ラカ」のキノラウ(化身)そのものとされています。
- 女神との一体化 ダンサーは、パラパライで作られたレイを頭(レイ・ポオ)、首(レイ・アーイー)、手首や足首(クーペエ)にまとうことで、女神ラカと一体となります。それは、「私の踊りをラカに捧げます」という敬虔な祈りの表現でもあります。
- 祭壇への捧げもの パラパライは、ダンサーを飾るだけでなく、ハラウ(教室)に設けられるラカの祭壇「クアフ」にも捧げられます。学びの空間そのものが、ラカの神聖な力によって守られていることの証なのです。
3. 女神ヒイアカの物語を宿す「パラアー」
もう一つの重要なシダが「パラアー」です。 このシダは、火の女神ペレの妹であり、フラの守護神の一人でもある女神「ヒイアカ」の物語と深く結びついています。
伝説によれば、ヒイアカは旅の途中、巨大な怪物(モオ)と戦う際に、パラアーで編んだパウ(スカート)を身にまとっていました。その神聖なスカートが彼女を守り、勝利へと導いたと伝えられています。
だからこそ、パラアーのレイは——再生や復活、そして困難を乗り越える守護の力の象徴として、特別な意味を持っているのです。
4. アロハの作法:自然から借りて、自然へ還す
レイの神聖さは、身につける瞬間だけでなく、その前後にある「心の作法」にこそ宿ります。
伝統的に、レイの材料となる植物を採集する際は、森の神々にオリ(詠唱)を捧げ、許しを得てから、必要な分だけを敬意を込めていただきます。
そして何より大切なのが、「後片付け」です。
役目を終えたレイを、ゴミ箱に捨てることはありません。 それは、私たちに力を貸してくれた神々(キノラウ)を捨てることと同じだからです。
感謝の祈りと共に、海や川に流したり、土に埋めたりして自然へ還す。 神々からお借りした神聖な力を、再び自然のサイクルへとお返しするまでが、フラダンサーの役割(クレアナ)なのです。
一本のレイには、これほどまでに深い物語と、文化への敬意が編み込まれています。
それは、ただの飾りではありません。 私たちの踊りが——ハワイの神々、偉大な自然、そして文化を紡いできた先人たちと常に繋がっていることを思い出させてくれる、緑の輝きを放つお守りなのです。
次にあなたがレイに触れる時、その美しさの奥にある、温かな物語を感じてみてください。 きっと、あなたのフラは、もっと深く、喜びに満ちたものになるはずです。
Me ke aloha pumehana, Motoe
